8月:榛原特製 千鳥団扇
榛原で取り扱っているうちはの中でも、 ひときわ愛らしい形が目を引く「榛原特製 千鳥団扇」です。
横長の扇面が風をしっかりととらえ、 また柄の部分の面積が広く、持ちやすいので、 美しさと機能性を併せ持ったうちはとして、人気を博しました。
現在このうちはを作っているのは、 関東でただ一人の都うちはの名工、加藤照邦氏でございます。 三十数工程に及び複雑な作業を、全て手仕事にて丁寧に仕上げています。
うちは作りは、冬に伐採した真竹を加工して、骨を作る作業から始まります。 まず竹を幅10~15ミリ、厚さ2ミリ前後の板状に割り、縦に刻みをいれてから 1ミリ幅にもみながら割いていきます。
これを十分乾燥させて、一本一本うちはの形の裏紙に貼っていきます。 およそ80本の骨を、同じ間隔で和紙に貼りつけるのは、根気のいる作業でございますが、
薄い和紙の下からほっそりとした竹がのびやかに広がっている様子が透けて見える様は、 何とも優雅で涼しげでございます。
こうして骨組みを並べた後は、表紙を貼り合わせて はみ出した竹骨を大きなハサミで切りそろえます。 最後に糊付けした細い和紙をふちに巻いて、柄を差し込んで完成となります。
戦後、扇風機やエアコンの普及により団扇の需要は下がり、 更にプラスチックの骨成型機の出現により、団扇を作る職人の数は 著しく減少いたしました。
しかし、そのような時代の流れの中にあっても 手仕事の伝統を守り、作られた団扇には格別な品格が備わっているように感じます。